M2052合金の新規性
M2052合金の新規性
 M2052 は、最初は音響界のマニアの間で評判を得た程度であったが、最近は精密機器、工作機械、自動車、船舶、宇宙技術へと波及している。その理由は以下の特性と関係する。(注4)
1. 制振特性は幅広い応力・周波数・温度に対応している。弾性領域であれば高振幅であるほど制振性は高い。
周波数は< 0: 01Hz~ 5MHz にまたがって振動を吸収できる。利用温度は、 4.2K から 200℃と広い。
2. 強度は軟鋼程度であり、構造部材として機能する。
3. 成型加工性が優れ、製品の形状・サイズは自由に選択でき、箔・薄板や細線・ワイヤーとしても供給できる。
通常のサイズの板材や棒材は提供に問題は無い。
4. 切削、穴あけ、転造加工はステンレス鋼並みである。
5. 鋳造も可能であり、複雑な形状の精密製品の量産に有効である。
6. 溶接 (TIG、レザー、電子ビーム、 18- 8ステンレス鋼との異種間 )・ロウ付けは容易、塗装性も良好である。
7. 銅・ニッケル・金・黒染などの硬質と軟質鍍金は可能で、他に FA 処理も行える。
8. 制振性は対数減衰率で 0.3が安定供給され、最適条件では 0.72 が得られる。
9. ヘリウム液化温度でも制振性は維持され、延性も失わない。
10. バネ定数を小さくする形状の工夫によって、衝撃緩和とは別に、低周波・高振幅振動の振動を吸収する機能が生まれる。
このような多面的な特徴を同時に備えた総合力に長けた合金は今までには存在していなかったのである。
本稿はこれまで公開された実用例(注5)を紹介し、新規オブジェクトの創製や課題のブレイクスルーの参考に供したい。
注4 4M2052 合金の解説はすでに別誌で一部が記述されている。[5],[6],[7],[8]
注5 秘守義務契約締結のためまだ公開できない例が多々ある。