M2052合金の振動吸収機構
M2052合金の概略
 振動吸収機構は他の詳しい解説にゆずる[9],[10],[11],[12]。合金においては4つの制振機構が論じられ、M2052 合金はその中の双晶型に属する。双晶は光学顕微鏡によれば図2のようなバンド組織として観察される場合が多い。母相とバンドの界面を境にして左右が双子のように対照的な結晶構造の関係が認められるところからそのように呼ばれている(図3の(6) を参照)。

 図3 は、外部からの振動を双晶がどのようにして吸収するかの機構を説明している。(1)のように、結晶に外力がかかると弾性変形し(2)にいたる。さらに外力が増すとそれに抗しきれず、(3)のように双晶が発生する。それ以上の負荷は(4)(5)のように、双晶の成長・拡幅あるいは他の個所に新たな双晶が発生する。外力を除けば双晶は縮小あるいは消失する。外力はこのような双晶の運動によって受け止めるられ、そこでエネルギーが消費され、振動を低減すると考えられている。光学ならびに電子顕微鏡観察によれば、わずか数十ナノメータという非常に小さな双晶から[12]、一方向凝固試片においては長さ数センチのものまで、製造工程に依存してさまざまな大きさの双晶が生成、あるいは存在する。
 この合金の電子顕微鏡写真の一例を図4に示す。双晶が並行または直交している状況がみられる。普通の合金の双晶に比べ、大きさははるかに小さく、双晶の質も異なり、次の特徴を備えている。
・双晶は外力によって容易に発生する。
・発生した双晶ならびに既存している双晶のそれぞれの界面は、外力によって容易に移動し、外力の除去によって双晶は縮小あるいは消失し、形状は初期状態に回復する。

 大きさの異なる多数の双晶が外力の大きさに応じ、小さな振幅の高周波振動は小さな双晶が、大きな振幅の低周波振動は大きな双晶が担うことで減衰に寄与するものと考えられる。したがって、振幅の小さな振動の除去は容易であるが、大きな振幅は、次号で言及するするように、一工夫を必要とする。
図2
双晶組織の簡易図
図3
外力による双晶の運動
図4
電子顕微鏡下での双晶組織