振動伝達率と高減衰比の問題
振動伝達率と高減衰比の問題
 振動源からの振動が隣接する部位に伝達する大きさは、振動論でよく知られているように、次式で表される。
ここに、
は伝達率、
は減衰比、
は強制角振動数、
は固有角振動数である。伝達経路の境目に減衰機能のある機構や材料、たとえば、コイルバネ・ダッシュポット・ゴムなどを介在させ
を調整する。
をいくつか与えた場合の
の関係を図11に示す。
 これからわかることは、
 1. 振動絶縁効果は
において現れる。したがって、固有振動数
が小さいほど効果が大きい。
 2.
の領域では減衰比が大きいほど振動絶縁は劣化する傾向がある。制振の側から見れば、減衰比が大きくなるとともに
では効果が薄れる。したがって、妥協策として普通は0:1 <
< 0:15程度になるように設計している。
結局、
の範囲では振動絶縁器のバネ定数を極力小さくしてダンパーを除去すればよいことになるが、バネ定数が小さくなるにしたがい機械は不安定になる。このパラドックスは、コイルバネ自体には減衰能がほとんどないことに起因しているからである。もし、コイルに減衰能があれば事情は一変する。
 M2052 製コイルは通常の鋼製コイルよりも格段低いバネ定数を求めることが出来るが、コイルの形状ではなくバネ定数の高い形状、たとえば、マウントの形状でも使うことが出来るから、このようなマウントで振動絶縁するのであれば上述したパラドックスから脱皮できる。すなわち、コイル状よりも強固で制振性も高い除振具が成立し、「安定な支持と高い振動絶縁効果」の併せ持つ除振器具の創出が考えられる。
 ゴムの場合は、金属バネやダッシュポットの場合とは異なり、損失係数´ を用いて次の式が妥当と考えられている[19]{[22]。
これによれば、減衰比が大きくなるにつれて
の高いサイトで起こる伝達率の不利な面は生じない。防振ゴムを使用した場合には、図12のように、
の範囲においても、損失係数が大きくなるとともに現れる振動絶縁効果の悪化はみられない。これがあるゆえに、防振ゴムは多用される側面もある。
 M2052 合金もゴムと同様な利点を擁しており、金属でありながらゴム的な長所が使える。すなわち、高減衰能の大きさを気遣うことはなく、その属性を有効に機能させられる。次の点はゴムに優るM2052合金の特異点である。
 1. 一般の金属製コイルバネ自体は制振性がほとんどないがこの合金は大きな減衰値を持っている。
 2. ゴムは強度が非常に低く、「ぐらつき」や「おどり」の危惧を伴う。
 3. 空気バネは設置に要する空間が巨大である。
M2052 合金はこれらの問題をクリアしている。後述の表1にあるように、この合金をコイルバネとして用いた場合の際立った利点がみられる。
図11
バネとダッシュポットを介する伝達率